急性低音障害型感音難聴

  突然耳が詰まった様な症状で発症する耳の疾患です。「聞こえない」と言うほど強い症状ではないのですが、 「耳が詰まった感じ」とか「音が変にゆがんで聞こえる」などの症状になります。人の話し声の周波数よりもむしろ低い周波数が 聞こえにくくなる、急性感音難聴の一つです。聴覚の神経である内耳(蝸牛:かぎゅう)に異常が起こって生じると考えられています。 「蝸牛型メニエール病」「内リンパ水腫」などと表現する先生もいます。若い女性にやや多いですが、それ以外の年齢層でも生じますし 、男性にももちろん起こります。明確な原因は不明ですが、徐々に解明されて来ています。

 上の図に示した様に、内耳は、聴覚に関与する「蝸牛(かぎゅう)」と平衡感覚に関与する「前庭(ぜんてい)」に分かれます。 蝸牛・前庭ともに、内耳はその内部に「リンパ液」という水が入っています。 この水(リンパ液)は、細かい血管を介して、血液の中の水分を上手にやり取りして一定の量に保たれています。 (一部のリンパ液は、脳脊髄液から供給されています。) つまり、蝸牛に水を送り込む経路と、水を排出する経路があるということです。  丁度、山の中腹に湖があって、水が流れ込む川と、水が出てゆく川があるようなイメージです。 この水の量が一定に保たれていることで、蝸牛は正常に機能し、正常の聞こえが得られます。



水の出入りのバランスが取れていると
水の量は常に一定

低音障害型感音難聴はどうして起こる?(推測されている病態)

   ところが何らかの原因で、蝸牛の水の出し入れのバランスが崩れてしまうことがあります。 特に、水が出てゆく経路に異常が生じると、蝸牛の「水はけ」が悪くなり、リンパ液が溜まりすぎてしまいます。 そうすると、蝸牛内の水圧が上がり、蝸牛は正常の機能ができなくなります。 この影響を一番受けるのが、低い周波数の音を感じる神経と考えられており、そのため低周波数の聴力が限局して低下したもの、 これが「低音障害型感音難聴」の病態ではないかと考えられます。ただこれも一つの説にすぎず、確実なものではありません。
 なぜ、水が出てゆく経路に異常が生じるのかは、まだはっきりとは解明されていません。 ただ、疲労やストレスを抱えているときに発症することが多いという事実があります。 疲労・ストレスがあると自律神経機能が低下します。 自律神経が調節を行なっているものの一つに、「血管の縮み具合」があります。 蝸牛から水を出す経路の血管が、自律神経の異常によって急に縮んで細くなってしまうと、 蝸牛から水が出て行けなくなり、リンパ液が溜まりすぎる状態となります。 これが「低音障害型感音難聴」のメカニズムではないかと考えることはできると思います。
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