急性低音障害型感音難聴(2)

治療はどうする?

   前のページに示したような「推測されている病態」を元に、いくつかの治療法が行なわれています。 治療の基本は、「内耳のむくみ・水ぶくれを取り除く」です。 ステロイド・循環改善剤・利尿作用のある薬剤などが使用されます。 自律神経の安定を図るために精神神経安定剤などを併用することもあります。 薬剤による治療以外にも、生活上の留意点がいくつかあります。 睡眠のとり方、水分のとり方、喫煙など、患者のライフスタイルに合わせて 必要な助言をしてゆく必要があります。

他の疾患との関係は?

「低音障害型感音難聴」と似た症状を呈するものに「突発性難聴」と「メニエール病」があります。
「突発性難聴」と違う点は、突発性難聴は基本的に一度生じると再発しないのですが、 「低音障害型感音難聴」は一度治癒してもまた繰り返し症状が出る可能性があることです。 中にはステロイドを内服していると症状が出ないのに、ステロイドを中止すると症状が出てしまうような 「ステロイド依存性」のタイプも見られます。 また、「突発性難聴」は必ずしも低音部の障害には限らず、難聴の程度も様々で、ひどい場合には まったく聴こえなくなることもあります。今のところ、「突発性難聴」と「低音障害型感音難聴」は 別の疾患として考えるのが一般的見解です。 (注:突発性難聴と思われる病態で、再発したケースもあります。 ただ、突発性難聴は、その「疾患の定義」として「再発しないもの」と明記されています。 定義に従えば突発性難聴ではないことになります。 ただ、わずかながら再発するものもあるのではないか?という考え方もあり、 学会などでも議論になっています。)
「メニエール病」と異なる点は、「メニエール病」は必ず回転性のめまいを伴いますが、 「低音障害型感音難聴」はめまいを伴いません。あくまでも聞こえの症状だけです。 ただ、最近の学説では、これらは程度の問題であり、「内耳の水ぶくれ」が蝸牛だけでとどまった場合は 「低音障害型感音難聴」で、前庭を含む内耳全体に生じた場合には「メニエール病」になるのではないか・・という 考え方もあります。私はこの学説には賛成派です。2005年度から厚生省特定疾患急性高度難聴研究班が 全国のいくつかの大学病院において臨床検討を行なっています。私も北海道大学の研究班として参加していました。 やはり、まだ原因やメニエール病との関連については明らかにはなっていませんが、 少しずつ解明が進んでいる、そんな疾患だと思います。 何か新しい情報が得られれば、更新してゆきたいと思います。

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