鼻水・鼻汁・後鼻漏

 鼻の内側の表面は粘膜で覆われています。粘膜は表面の湿り気を保持するため、常に粘液などを分泌しています。鼻水・鼻汁はこの分泌物の量が過剰になったり、細菌などの感染を伴って性状が変化したりして、鼻腔内にとどまらず外部に出てきたものです。鼻の中は、前後と上方に広くなっています。分泌物が前から鼻の穴に出てくれば鼻水や鼻汁ということになりますし、後ろに出てのどに落ちると、後鼻漏(こうびろう)となります。
 病気によって生じる症状である場合と、粘膜の生理的反応によって生じる症状があります。

1)アレルギー性鼻炎は、いわば「体質」によって生じるものです。 くしゃみ・鼻水・鼻づまりが3大症状ですが、どの症状が顕著かは個人によって異なります。 アレルギー性鼻炎の際の鼻汁は「水様性」と表現され、いわゆる『水っ洟(みずっぱな)』と言われるものです。アレルギー性鼻炎は残念ながら「治ってしまう」ことはありません。原因となる物質(ハウスダストやダニの死骸の砕けたもの、花粉など)が鼻から進入する状況下では症状が出ます。これらを吸引する量を減らす努力が最優先で、あとは投薬(内服や点鼻薬)によるコントロールが必要です(治療というより管理です)。


2)副鼻腔炎は、子供にはしばしば認められます。 悪化して重症なものは世間一般にちくのう症と呼ばれます。成長に伴う顔面や鼻の構造変化によって、自然と改善する場合が多いです。 症状が軽くて一時的なら、あまり心配しなくて良いと思います。 一方で、青年期に入っても引き続き症状に悩まされるケースもあります。 小学校中学年以上でも常に「鼻汁」を垂らしているようなお子さんは、そうなって行く可能性がありますので やはり内服などの治療を継続することをお勧めします。 鼻は構造的に、薬の効果が現れにくい場所であると言って良いと思います。 したがって薬の効果が得られるまでに時間を要します。 あまり強くない薬を、長い期間服用することが必要だと思います。
小学校低学年以下は、風邪や冷たい空気の刺激、室内の塵(ちり)などによってすぐ鼻炎となり、場合によっては副鼻腔炎を生じます。これに対して『画像診断」と称してレントゲン検査を繰り返したり、抗生剤をあまりに長期で投与することは、過剰診断・過剰治療につながりかねません。この年齢に関しては「目に余るほど悪い鼻汁」は治療しますが、多少は
目をつぶってゆくことも過剰診療をさけるためには必要と思われます。

3)生理的に冷たい風などの刺激で鼻水が出ます。 汗かきの人とそうではない人がいるように、刺激に対しての鼻水の出方は個人差があります。 このような症状も、ある程度は薬で抑えることが可能ですが、 「生理的」であるわけですから、あまり神経質にならず経過を観ましょう。


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